最終更新日時 2024-04-26 22:28:34

新春メッセージ⑫-『エネルギーと経営、転換点の年』 永井 隆氏 経済ジャーナリスト

★「エネルギーと経営、転換点の年」ー電力不足の時代    永井 隆氏  経済ジャーナリスト
                       2009年9月15日  例会 講師: 「ビール戦争に見る企業間競争と栄枯盛衰」

2009年9月例会で講演中の永井隆氏

昨年の原発事故により、湯水のように電気をジャブジャブと使う時代は終わりました。原子力をベース電源とする、従前の電力供給体制は崩壊してしまったからです。

 原油は高騰していきますが、火力発電への依存度は上がります。化石燃料の使用増は温暖化対策コストを引き上げていく。また、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、基本的に高コストです。

 慢性的な電力不足に加え電力が割高な状況が継続するなら、生産拠点の海外移転は加速されていくでしょう。「超円高に加え、電力不足はボディーブローのように、日本の産業界に深刻な影響を与えている」(電機メーカー首脳)、「工場や開発拠点をアジアに移せば、新興市場のおう盛な需要に応えられる上、もう一段利益をアップできる」(自動車メーカー首脳)という声は上がっています。

何より、明治大学や東京大学を卒業した優秀な若者が、国内でなかなか就職できないようでは、我が国の未来は開けなくなります。「企業は栄えるが、国は衰える」は避けたいところです。

それだけに、脱原発か縮原発かといった原発に関わる議論ばかりではなく、あらゆる電力調達を今年は考えていく必要があります。例えば、水力や太陽光の発電量が豊富なアジアから、直流で送ってもらうという方法もあります。液体窒素で超低温にした超伝導ケーブルによる送電網「スーパーグリッド」を使えば、長距離送電は可能になります。エネルギーの安全保障という問題は伴いますが、テスラー(交流を主張)を超えてエディソン(直流を主張)よ、再びです。

もっと現実的な部分としては、太陽光発電も蓄電池となるリチウムイオン電池はみな直流なので、ノートパソコンと同様に直流家電製品を開発していくのも、エネルギー効率アップにつながります。仮に集中型電源から分散型電源へとシフトしていくなら、直流家電は必須になっていきます。

2012年は、単純に一年を通して電力不足を乗り越えるだけではなく、エネルギーを有効に使っていく新たな方向に動き出す年となるでしょう。

一方、サラリーマンが働く企業のなかはどう変わるのか。

高価で少量のエネルギーを、企業は大切に使っていかざるを得ない状況です。このため、細かな管理を得意とするタイプが、会社の主導権を握っていく傾向は強くなるでしょう。一般に、管理タイプは会社に秩序をもたらします。具体的には総務や経理、CSR担当などに多く、経営学部会計学科などはこのタイプを養成していきます。管理タイプは特に、コンプライアンス(法令遵守)では重要な役割を果たします。

その反面、独創性に乏しく、新しい価値の創出はできないと、されます。管理タイプが力を持ち過ぎると、つまらない会社となり、一方で組織の官僚化は進みやすくなる。「営業の会社が管理の会社になった」、「あのメーカーから魅力ある製品が出なくなった」などと言われるのは、管理タイプの力が増したのも原因です。本来は、実務家タイプ、起業家タイプ、統合者タイプなどと、力が拮抗している状態が理想とされます。

管理を強化しながらも、本来の企業活力を維持させなければなりません。コンペチターである、サムスンをはじめ韓国や中国の企業は力を増してますし。日本企業においては、トップのリーダーシップ、経営力が今年ほど求められる年はありません。

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