最終更新日時 2024-04-26 22:28:34

2014年新春メッセージ④-時事通信社 社長 西澤 豊 

2013.9.10 9月例会講演 時事通信社社長 西澤豊氏

2013.9.10 9月例会講演 時事通信社社長 西澤豊氏

全国紫明クラブの皆様、明けましておめでとうございます。

  昨年、一番のニュースは2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催決定でした。前回の東京五輪が1964年ですから、56年ぶりです。招致成功の要因は、国を挙げての熱意と安倍首相をはじめとしたチームワークでした。招致失敗に終わった4年前の鳩山政権の時とは雲泥の差です。
明るい目標ができると、そこに向かって気分も前向きに、明るくなります。アベノミクスの「第4の矢」にたとえる声もありますが、是非とも日本経済の浮揚につなげなければならないでしょう。前回の東京五輪は高度経済成長期。時代の雰囲気は「3丁目の夕日」の世界でした。私は中学2年生でしたが、次は古稀で迎えます。半世紀を超えて成熟国家として開催される東京五輪に期待したいと思います。
次に挙げるニュースは、7月の参院選でいわゆる「衆参のねじれ」が解消したことです。政治の安定が日本経済に与える好影響は明らかです。日本新聞協会が年始に行っているその年を占う「予想アンケート」で、一番難しいのが12月末の首相を当てる問題です。安倍さんから野田さんまで6年間は1年交代でしたから私は見事に全部外れでした。しかし、今年は安倍さんが2度目の正月を迎え、短命政権の連鎖に終止符を打ちました。これも「ねじれ」解消によるところ大です。
最後に付け加えたいのが秋の臨時国会で大きな争点となった特定秘密保護法です。私もメディアに身を置く者ですが、戦前に逆戻りするかのような一部のキャンペー報道には違和感を覚えました。問題はこの法律が必要かどうかです。各メディアが世論調査をしていますが、数字はまちまちでした。どうしてそうなるのでしょうか。
時事通信が11月8~11日に行った調査結果は「必要」69.4%、「必要ない」21.5%でした。共同通信は23、24両日実施の調査で、「賛成」45.9%、「反対」41.1%でした。設問は「国家機密を漏らした公務員らに対する罰則を強化する特定秘密保護法案について」(時事)、「機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案について」(共同)です。
これに対し、日経の調査(22~24日)は「賛成」26%、「反対」50%。朝日の調査(日経の1週間後)は、「賛成」25%、「反対」50%でした。設問は「法律ができると、外国と機密情報をやり取りしやすくなる一方、国民の知る権利が損なわれるとの懸念が出ています」(日経)、「この法案で政府の都合の悪い情報が隠され、国民の知る権利が侵害される恐れがあるとの指摘もあります」(朝日)となっています。
要は設問で答えも大きく変わるということです。日経と朝日はメリット・デメリットを併記する形ですが、デメリットに「国民の知る権利の侵害」をいれると、反対が大きく跳ね上がります。特定秘密保護法が「必要」であれば、徹底して中身を議論すればいいのですが、頭から「反対」という調査結果を突き付けては議論になりません。
一般の読者は設問の中身まで考えていないでしょうが、世論調査、それに基づいた報道の在り方を考えさせられます。
 さて、今年はどうなるのか。今年の干支は甲午。相場の格言では「辰巳天井、午尻下がり」というそうです。巳年の昨年、確かに株価はアベノミクスで上昇しました。この格言通りとすれば株価上昇は期待できませんが、どうなるでしょうか。また、お昼を正午というように、午は太陽が最も高く上がった状態、勢いが盛んな状態を指します。それは反面、天井を打った後、下り坂になるということでもあります。安岡生篤は「反対勢力の高まりを示す」と書いているようですが、安倍政権の先行きを占う上で今年は正念場になると思います。

最後になりましたが、今年1年、皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

 

 

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