最終更新日時 2024-04-26 22:28:34

2014年新春メッセージ③-前上野動物園長 小宮輝之 

★午年を迎えて  

H25.5.28  総会例会 講師 小宮輝之前上野動物園長

H25.5.28 総会例会 講師 小宮輝之前上野動物園長

 私は昭和47年に農学部を卒業して飼育係として多摩動物公園に就職しました。私の最初の担当動物はキツネ、シカ、イノシシなど日本産哺乳類とヤギなどの家畜です。安い動物たちが担当だったおかげで、新人なのに好きなように飼ってよいと任されてしまったのです。自由な発想で仕事に取り組むことができ、飼育の難しいとされたノウサギを飼い、繁殖の難しいとされていたガンを殖やすことに成功しました。5月の紫明クラブでは私を育ててくれた安い動物たちとして敬意をもって紹介いたしました。

新人時代に育んだ飼育係としての仕事、動物に対する考え方は、40年間の動物園人生活で、ずっと持ち続けていたようです。上野動物園の園長7年間で印象に残っている仕事が3つあります。一つはクマの冬眠展示にチャレンジして成功したこと。二つ目は不忍池に緑を回復させ、生物多様性の池として再生させたこと。もう一つは子ども動物園の動物たちを日本在来の家畜にしたことです。

クマの冬眠にチャレンジしたのは新人時代に担当したクマたちが冬になると食欲がなくなり動きが鈍くなり眠たそうにしていたことが、ずっと頭の片隅にあったからです。不忍池にガンを放したり、池の中の島でワシを飼ったりすることで、不忍池の生物多様性を豊かにしたのも飼育係時代にガンを繁殖させたことがヒントでした。

子ども動物園で飼われている家畜や家禽を西洋の品種から日本在来品種に変えたのも新人時代にヤギなどの家畜を担当していたことを引きずっていたと思っています。古墳時代から明治維新までずっと日本人の生活を支えてきた日本在来馬など在来の家畜や家禽です。侍が乗っていたのはサラブレッドじゃなくて木曽馬なのです。今年は午年です。上野動物園の子ども動物園で、日本古来の木曽馬や野間馬に会って、日本の歴史や文化に思いを馳せてはいかがでしょうか。

 

 

返信する