最終更新日時 2018-05-28 14:31:01

私の趣味ー『狛犬』 第1回 (藤山正純) 

★狛犬の話       佐賀県 藤山正純 (S47政経 藤山正純法務事務所)

藤山正純氏

会員の皆様に、まずは自己紹介を申し上げます。
私は昭和47年に政治経済学部経済学科を卒業し、故郷である佐賀の地方銀行に就職しました。その後は多くの人が経験する通り、なにがしかの風雪を経つつ、多少の実りも得たサラリーマン生活でした。振り返れば、全く月並みではありますが、長いようで短くもある36年間でした。
その間に、職業人としての訓練を受け、恋愛や結婚も経験し、切磋琢磨や競争の現実も知り、人間として重要な様々な事柄に出会って、世間知らずの学生からいっぱしの社会人になれたことを、有り難く感じています。この期間を総括して、楽しかったと振り返ることのできる幸せを、今は実感しているところです。
現在私は、行政書士という仕事に就いています。在職中に資格を取得したときは、開業は予想していませんでした。しかし第二の人生に直面したとき、自営業という選択肢があったことは幸いでした。サラリーマンとしては、もうこれ以上やれることがないと感じていたからです。
 それやこれやで、六十の手習いで始めた仕事ですが、それからでさえ、もう5年が過ぎてしまいました。光陰矢の如しです。
この度、眞柴会長にお誘いいただき、私の趣味である狛犬の話を投稿させていただくことになりました。拙い文筆をお目に掛けるのも気恥ずかしい限りですが、校友のご寛容を仰ぐばかりです。

 1.狛犬概論
狛犬を語るに当たって、まずは狛犬とは何かということをお話ししなければなりません。
ところが、これは全く一筋縄ではいかない仕事でして、その分、文章が冗長になりがちでもあり、一方、皆様の興味を惹くような事柄も多々含まれているであろうと期待するところでもあります。

(1)狛犬の登場
 「狛犬」と一言で呼んでいるものは、実は「唐獅子」と「狛犬」という別の動物の組み合わせでした。向かって右が唐獅子で、左が狛犬です。この「唐」「狛」はどちらも漠然と「外国」を意味する言葉で、特定の国を指しているわけではありません。すなわち唐獅子も狛犬も、それまで日本にはなかった特異な姿の霊獣として導入されたので、「舶来」ということが特に意識された命名となったものと思われます。
 冒頭、「でした」と傍点を振ったのは、今日では、見た目に関する限り、どちらも同じものになってしまったからです。これは作り手の側の認識もそうであり、場合によってははっきり雄雌のツガイとして彫刻されているものもあります。ここまでくるとさすがに曲解と言わざるを得ませんが、そもそも空想上の霊獣なのですから、誰もその姿を見たものはいませんし、どのような解釈がなされようとも、間違いと決めつけることはできないようにも思います。

大宝神社木造狛犬

 では次に、この狛犬が日本に登場した時期を知りたいところです。直接的な史料としては、残されている古い狛犬の像がありますが、現に遺存するものとしては、12世紀までしか遡ることができないようです。平安末から鎌倉期ということになります。
狛犬愛好家の間では、滋賀県の大宝神社の狛犬(写真)が有名ですが、これもやはりその頃のものです。すなわち武家文化を反映した鎌倉彫刻の力強い作風に従って造られています。

 文献資料としては、有名な「枕草子」が初出というのが定説です。そうすると、西暦1,000年頃には狛犬が宮中の調度品として確立していたことになります。そこでの用途は、天皇が座る椅子の前に下げられる、御簾の揺れを止めるための「重し」でした。掛け軸における「風鎮」に似た役割かと思われます。従って、それ自体が礼拝の対象となるようなものではなくて、異国趣味のしゃれたインテリアに過ぎなかったわけです。

ここで重要なことは、そこには「ししこまいぬ」と明記され、唐獅子と狛犬がちゃんと区別されていることです。宮中行事の際に、女官が保管場所から持ち出してきて、然るべく設置するものだったようですから、女性にも簡単に持ち運ぶことができる大きさと重さでなくてはなりません。しかも、専門家でもない女官が、「しし」と「こまいぬ」を見分けて間違いなく配置できるということは、一見してその違いが分かるものであったことをも示唆しています。

同時代の「栄華物語」でも、「ししこまいぬ」と書き分けていますから、ここからも同様のことが言えるわけです。つまり西暦1,000年頃には、狛犬がしきたりの中にすっかり定着している様子がうかがえます。ということは、その登場はそれよりかなり以前のことだったと推察できるのです。残念ながら、これらの乏しい材料を元にして、それがいつ頃であったかを特定することはできません。少なくとも平安時代にはもうあった、ということに留めておきます。いずれにしても、「狛犬」とは、アジアの近隣諸国にも例のない、「唐獅子」と「狛犬」の組み合わせであることをご紹介して、第1回目を終わらせていただきます。(つづく)

 

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