最終更新日時 2021-05-13 14:10:46

いつもアンテナを! 石澤典夫(1976年法学部卒)

いつもアンテナを!

防犯協会機関誌

  

(1976年 法学部卒)

                                               石澤典夫

大阪芸術大学教授(放送学科)

    

                                                                                                 

 放送局の仕事には、今を大切にする「生」の部分と半年、一年、更に5年・10年先を見越して番組を準備をするという大きな流れがあります。 

 私が担当するNHKラジオ深夜便でも事情は同じです。毎月の会議で2カ月先の提案を募ります。例えば4月でいえば6月に放送する提案をします。つまりいつも2か月から3カ月先の旬の話題や人を探して提案をする事が求められます。ここで大事な事は「今、なぜその人なのか」という点です。なんでもいいわけではありません。しかし言うは易し!そう簡単にぴったりの人や話題が見つかるわけではありません。各部署でその旬の人を探していますから、バッティングすることもしばしばです。その為にテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・折込チラシ・業界の新聞、友人とのお茶の席などあらゆるところにアンテナを張って「何かないか!誰かいないか?」とまさに目を皿のようにして情報を収集します。

 私は毎月第2・第4水曜日の深夜便を担当しています。

 そして月に一回、「私のアート交遊録」というインタビュー・コーナーを持っています。美術館の学芸員、作家、大学教授、アートが大好きな俳優や歌手の皆さんにアートとの出会いやその魅力を語って頂く約40分のコーナーです。

 毎月一回のこのコーナーをすべて一人で準備します。まず旬の話題や人を探し、部内の会議に提案します。提案が採択されると(されなければされるまで探します。そうしないと番組に穴が開きます!)本格的に御本人と出演交渉をし、出演OKがでると今度はスタジオを確保します。これがまた大変!放送局ですからスタジオは売るほどあると思われるかもしれませんが、実はいつも争奪戦です。出遅れるとNHK内ではなく外のスタジオを借りてという事になり、これはこれでまた手続きが大変なのです。そしていよいよ収録の日を迎えます。収録当日は玄関までゲストをお迎えにあがりスタジオへ案内します。

 ここからがいよいよインタビュアー本来の仕事です。

 インタビューのinterとは相互に、viewは見る。「今、なぜこの人なのか」といインタビューの基本に立ち返って集中します。担当者によっては放送時間より多めに収録をする人もいますが、私は基本的に生放送のつもりで緊張感の中、放送時間に近い形で本番に臨みます。その方が聞く方も聞かれる方もやり直しがきかないという緊張感があると思うからです。そして収録を済ませた後、ゲストを送り出してから、今度は収録したお話を放送時間に合わせて編集をします。更に出来上がった収録メモリーに表示を付けて深夜班に納入します。その上で放送当日に自分で紹介して放送という事になるわけです。

 この作業そのものは慣れてしまえばそんなに大変な事ではないのですが、やはり大事なのは常に「旬の人を探し、限られた時間の中で何を聴くか」ということです。相手の本質に迫ろうとするインタビューは、実はインタビュアー自身の中身をも容赦なくさらけ出すことになる諸刃の剣なのです。

 この仕事について早45年、今日も各分野のスペシャリストの人生や生きる知恵に出会うため張り巡らせたアンテナの精度を高め、目を皿のようにする毎日が続いています。

 因みに4月29日の私のアート交遊録のゲストは桜の画家ともいわれる日本画家の中島千波さんです。朝4過ぎの放送です。お目覚めでしたらお聞きください。

 

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